心がいのちを守っているんだ

 

仕方なく生きている、

という人がいる。

 

「あの人のように勇気がないから死ねない。だから早く迎えに来て」、

という人がいる。

 

生きる活力の喪失。

人は人知を超える体験をしたとき、今まで積み重ねてきたものが足元から崩れ去り、人生に圧倒的な無力感が生じ、生きる力を失う。

 

これは特別なことではなく、外部から入ってくる刺激を徹底的に遮断し心を守るためなの自然な防衛反応なんだ。

あなたの心と思いに反して、体が生きるために起こしている生きるための反応なんだ。

 

ご飯の味もなく、

好きだったものにも心動かず、

草花は目に入らず、

世界の色はなくなり、

ただ灰色の一面が広がるだけ

 

もうこんな世界は価値がない、意味がない、生きていても仕方がないと思ってしまう。

「本当はこんなふうになんて思いたくない。でも…」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

あの人を逝かせてしまったことだけでなく、「生きる意味がない」と思ってしまう自分さえも責めてしまう。

 

でもね、それは心がまだまだ休みたいってことなんだ。

まだ外界の刺激には触れたくないって。

心が命を守っている

大切にしている証拠

自暴自棄とは違うんだ。

 

だから焦らなくていい。

世界はゆっくり色を取り戻していくから。

もちろんあの日とは大きく世界の色は変わっているかもしれないけど、

世界の色はいつだって変わっていくものなんだ。

変わってしまったことに打ちひしがれることなんて何一つない。

 

世界の色は変わっていく

ふと、ご飯が美味しいって

ふと、空がきれいって

ふと、花のいい香りって

そんな積み重ねで世界の色は変わっていく

世界の色が変わることに罪悪感なんて抱かなくていいんだ

 

そしてあの人に伝える。

「早く迎えに来て」、から

「もう少し待っててね」と。

 

「あなたが死んだから、私も早く来てしまいました」なんて言って、

あの世でも悲しませるつもり?

「あなたがいなくてって、生きる意味を失いました」と伝えて、

あの人をさらに後悔の念にさいなませる?

 

「苦しくつらく、耐え難く、あなたがいなくなってからの世界はあまりに過酷だったけれど、

それでも小さな色を少しずつ、少しずつ見つけられるようになって、ここまで生きてこれました」

 

そんな笑みを一つ浮かべ、あなたに駆け寄りたい